「歌うネアンデルタール ―音楽と言語から見るヒトの進化/スティーブン ミズン」
近年、「コトバがどのようにしてウタになるのか?」とか「コトバとオトとウタの関係」というようなことが気になっている。
すると必然的に、言語の起源、音楽の起源、聴覚と人類の進化、というテーマに行き当たる。
音楽の起源に関して、これまでの主要な説では、音楽は言語の副産物つまりコトバのおまけのような位置づけとされる事が多かった。
そしてその目的が性的なものであるという話もよく目にしたが、それらはどうも納得できるものではなかった。
この著者 スティーヴン ミズン 氏は、言語と音楽に共通の先駆体があったという。
コトバでもなくウタでもない、何か音楽のようなコミュニケーション体系をつかって、僕たちの祖先は暮らしていたと。
それを「Hmmmmm」と名付ける。
まるでハミングを思わせるその名称には意味があり
H Holistic 全体的(単語的でない)で
m Multi-modal 多様式的(動物の鳴き声のようにパターン化していない)で
m manipulative 操作的(こっちおいでの動作みたいな)で
m musical 音楽的で(音程やリズムがある)
m mimetic ミメシス的(模倣的)な
そのようなコミュニケーション体系だという。
それを「歌うネアンデルタール」と表現したのがこのタイトル。
考古学、脳科学、言語学など様々な角度から導かれる論は説得力があり、エキサイティングだ。
遙か昔の地球には、まだ言葉を手にしていない僕たちの祖先の歌声が響いていたのだ。