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バシェの音響彫刻

大学生になった息子は、コロナの影響でまだ一度も登校しておらず、毎日オンライン授業だ。
夏まではこれが続くらしい。
学習の一環(建築科に入った)で、日本の古民家のあるところに行くという。
ぼくも興味があるので便乗して同行したのが、神奈川県の生田緑地にある、川崎市立日本民家園。主に東北と関東甲信越地方の古民家25件が広い敷地内に移築されてある。



生田緑地には岡本太郎美術館も隣接していて、企画展「バシェ音響彫刻」のポスターを発見。以前から気になっていたバシェ音響彫刻を見ることが出来た。バシェがフランス人の兄弟の名前だったことをはじめて知った。
実際に音を鳴らすことは出来なかったが、再現して収録された音が再生されていた。素材を反映した金属的なアンビエントのようなサウンドが中心。オシレーターにもアンプにも電気を使わずに物理的に動作する「アコースティックシンセサイザー、あるいは機械式シンセサイザー」とでも言おうか。


そして、ここは岡本太郎美術館。恥ずかしながら岡本太郎さんの作品群をしっかり見るのは初めてで、その作品の後ろにある思想や感覚にも共感する点も多く、何より作品の持つ力に圧倒された。久高島のイザイホー(12年に一度行われる儀式)の取材を行うような民俗学的な視点や「太陽の塔」にも見られる樹木あるいは自然に対する意識、それらをふまえて彼の作品に向かうと、それまでとは違う奥行きが見えるようになった気がする。
出口近くに展示されていた彼の言葉はこのようなものだ。

「芸術は創造である。絵画は万人によってつくられなければならない。
『芸術は大衆のものだ』『芸術は自由だ』の命題は絶対である。
少数特権者の権力を背景とした威圧的で晦渋な技巧を解消し、
偏狭な職能の枠を排して、全く自由な表現をもって
大衆の中に飛びこむものこそアヴァンギャルド芸術なのだ
岡本太郎」

大衆を見下し、背を向けることは簡単だ。しかし彼が考える前衛は大衆の中にあったのだ。

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